E60 M5にお乗りのお客様より、ブレーキが効かないとの事で修理をご依頼いただきました。
とっても上品で綺麗なsepang bronze metallicのM5。
早速症状確認をさせて頂きましたが、ほんとに効かないです(*_*;
エアが噛んで1系統(正常であれば2系統)しか効いていない様子です。
テスターを繋いでステータスを見ると、ブレーキを踏んでもリアブレーキの圧力が0barで全然ダメです。
今回の症状の少し厄介なところは約1週間、約400キロ走るとエアが噛むと言ったところでしょうか。
停車していても多少は噛むようですが、走っている方が症状は悪化します。
漏れは無し。ブレーキフルードの減りも皆無です。スローでエアが噛んでいくという症状です。
走行距離は約35000キロ。
S85 V10エンジン。一見派手ではないボディに、誰がV10エンジンが載っていると想像するんでしょうか。
エア抜きをすると数値上はしばらく正常に戻ります。僕ら目線ですが、この年式で細かく数値が見れるのもMモデルの良い所です。
繰り返し症状が出た時に診させて頂き、
分かったことは
・必ずリア側にエアが噛む事
・右リアと左リアは特に関係なく噛む事
・外部に漏れは無い事
です。
もうマスターシリンダーか、DSCユニットしか考えられません。
マスターシリンダーから出ている、リア側の配管とDSCユニット間で噛んでいるので、もう絶対にどちらかしかないんです。
この配管でエアが噛む。
目視で見れるものはくまなくチェック。。
マスターシリンダーも。
目視ではどれも決定打なし。。
一番疑わしきはDSCユニット。ですが高価な物を換えて、ほんとの原因は「マスターシリンダーでした」なんてことは口が裂けても言えないので、お客様にご相談したところ
「マスターシリンダー換えてみてください」とご快諾を頂きました。僕はチキン野郎です。
これで直ったら儲け物!?神棚にも手を合わせました。
そんな想いもむなしく、1週間後エアが噛みました。。
という事でDSCユニットを注文させて頂きました。これで直らなかったら整備士辞めます。
新旧DSCユニット。因みにDSCユニットの修理って、基盤は出来ても機械的な油圧回路の修理って出来ないようです。
装着後はエア抜きとプログラミング/コーディングを実施。
ブレーキのトラブルが完了したことで、併せて修理をご依頼頂いたEDCの警告灯の修理へ。
と言うよりブレーキの症状確認中にチラホラ警告が点きだしたものです。
どこかの配線抵抗の増加によるものだと思っていたのですが、診断の結果EDCダンパー内部の不良でした(..)
時々ダンパー内部の抵抗が増加することが今回の故障原因のようです。
新旧ダンパー。
周辺パーツ。黒い中間コネクターであってほしかったのですが、若干の抵抗増はあったものの、根本源では無かったです。
組付け後、装着→アライメントの実施。
EDCの修理後は、ご依頼頂いたトランスミッションオイルと診断中に気になった水漏れの修理へ。
ミッションオイルは気持ちいいくらいに汚れていました!
ストレーナーも清掃します。これがとっても大事です。
LIQUIMOLY MTF5200にて。ゲトラグは流動性が大事です。最後にエア抜き、レベル調整の実施。
水温センサー部からの水漏れ。
交換。
DSCユニットの機械的故障ですが、ブレーキフルードの交換が疎かになった場合になど、内部に結晶が出来てしまって、踏んでも油圧が伝わらなくなったり、反対にペダルを放しても油圧が掛かったままで引きずってしまったりと言ったトラブルがあります。
ただ、しばらくすると漏れが無いのにエアが噛むというのは初めての経験でした。
これは推測ではブレーキフルードのメンテナンスの問題と言うより、本来は新車保証時に出てくれるようなトラブルだったんじゃないかと思ったりします。DSCの初期不良
最近は極度に低走行のいわゆる“極上車”と言われるお車のご入庫が増えて参りました。
先入観にとらわれることなく、総体的に診ていく重要性を改めて実感致しました!
この度はご依頼をありがとうございました!